こんにちは。アイアンドディーのマーケティング部升水です。
BtoB製品サービスを取り扱う中小企業の方が「MAツールを導入する」となった場合、まず着手されるのは「メール配信」が多いように思います。
ただし、MAツールの導入支援やマーケティング施策の支援をしている担当者が客観的に見て、あんまり上手くいっていないよね…と思うこと しばしばです。
マーケティングオートメーションを使った販促実行シナリオについて集中連載をする第一回のお題として「メール配信で陥りがちな罠」について整理させていただきます。
…偉そうなことを書いている私自身もやっつけ仕事でメール配信を指示しがちなのですが、自戒の念もこめて皆様のお役に立てる情報提供をしてまいりたいと思います。
メール配信で陥りがちな5つの罠
メール配信の結果が思わしくない要因は、大きく分けて以下の5つなのではないかと拝察します。
1.ALLでメール送信したい病。
2.メールコンテンツ作成が属人化しているため、量産できない、続かない。
3.そもそも、案内したいことがない。(と思い込んでいる)
4.投げっぱなし、ノーフォロー。または過剰フォロー。
5.思いつきで実行してしまう。
以下、MAツール活用のシナリオを設計する前段で、それぞれの考え方や改善策を取り上げます。
詳細については、長くなりそうなのでそれぞれ記事を分けてご案内させていただきます。
メール送信対象を選別する
1のALLでメール送信したい病。
これは「ターゲット選定」の話であり、フォロー施策や目的から逆算して、メール対象の選定を行う必要があります (絞るは、すべてのマーケ施策の基本)。
「全顧客に合致条件」で告知しなければいけないオファーは、極小です。
いつものメール受信箱を想像してみてください。誰しも 要/不要を無意識に分けていると思いますが、不要だと判断される共通項は「その情報、要らない」です。
今 要らない(Budget / Timeframe)かもしれませんし、僕 要らない(Authority)かもしれません。その場合は、今後使うかもしれない情報としてストックする、または他の人に共有するという何らかのアクションが行われます。しかしながら、必要性(Needs)のない情報についてはBtoB取引において本当に要らない訳でして、即時ゴミ箱行き、じきに迷惑メール認定となります。
オファーしたい側は、皆様に知っていただきたい情報かもしれません。しかし、受け取り手にBANT条件のうちNeedsがないオファーを、無自覚に大量に行うのは避けたほうが良さそうです。
※大量の顧客情報から選別 / クオリファイする目的であれば、ギリギリOK。
適切な人に、適切なタイミングで、適切な手段を使ってオファーを出す。MAを使ったメール配信であっても、基本は変わりません。
マーケティングオートメーションですと、データベースに登録された法人・個人・折衝履歴に様々な目印(フラグメント)を付けることができ、抽出もできます。むやみやたらのALL配信から、人を選んでのご案内に進化?します。各種フラグメントを設定する話、抽出する話は、別の機会に詳細掘り下げた記事をご案内させていただきます。
また、ALLで送信しないと数が担保できないケースもあるかと存じます。
その場合には、メールよりも先に見込顧客を増やす施策に注力すべきかもしれません。
反響率ベースで考えますと、アウトバウンドコール > アウトバウンドメール ≒ 紙DM > FAXとなり、およそ5%、0.5%、0.05%となりますので、母数は特定の条件で絞って1000確保できるかできないかが1つの判断基準となります。
メール配信のひな型を作る
2の「メールコンテンツ作成が属人化しているため、量産できない、続かない」は、「平準化」の話となります。
同じメール・DM等の施策を行っても、おおいに反響が出る当たりメール・DMを作る人とそうでない人が出てまいります。結果、「メール・DM作るならこの担当者!」となってしまいがちなのですが、はたして本当にそうなのでしょうか?
結論申し上げますと、メールにもDMにも一定の法則があり、ある程度の成果でしたら再現性をもって量産することができます。太古の昔、私が担当者だった時に口酸っぱく言われ続けていたのは、「リスト7割、キャッチ・アクション2割、オファー内容1割、なんならインセンティブの方がオファー内容より重要」でした。
たしかに実際にそうで、リスト選定とキャッチ・CTAさえ間違えなければ、誰がどんな製品サービスでコンテンツを作っても一定の結果は出たものです。神がかり的な5-10%の反響率を出せ!は無理でも、勘所さえ押さえれば1-3%の高い平均点は出せるという訳です。Webやインバウンド系、継続アプローチ系、チャネル販売系の施策ですと若干押さえるツボは違うのですが、アウトバウンド系はメール・紙DM・FAX・コールと手段を変えても、押さえるポイントはすべて一緒です。
上記を踏まえますと、メール配信を実行するにあたって肝要なことは「作業の平準化」です。あらかじめ、メールの型・オファーの型を決めてしまうことが最も有効かつ簡単です。
BtoBマーケティングを行う際、メール配信する際の基本的な構造は、経験上3パターンとなります。(上図ご参照)
様々なバリエーションはございますが、個別案内 / 目的明示 / 継続案内 いずれかの型に収れんします。メール配信のパターンとアクション設計については、記事を分けてご案内いたします。
社内・社外でネタを捜索する
3の「そもそも、案内したいことがない」は、「ネタの話」と言い換えることができます。
企業活動の中で、何にも他社に提供できる有用なネタがないということはあり得ず、必ずやどこかに情報は眠っております。「断固としてない!」と反駁されますと、逆に企業の存在価値はあるのでしょうか…というお話になってしまいます。
肝要なのは、有用なネタの見つけ方・拾い方です。
経験上、お宝コンテンツの多くはお客様に近い現場、具体的には営業現場やカスタマーサポート部門に眠っています。きわめて無造作に転がっているケースが多い印象です。
その際、担当に「何かネタはないのか?」と聞くのは誤りです。これは私の持論ですのでオーソドックスな考え方ではないかもしれませんが、だいたい営業担当から出てくるとっておきのエピソードは売り手の主張:セリングポイントで、お客様の欲しい情報:バイイングポイントではないのです。
「いやー、お客さんに話してるのはこんなことで、めちゃくちゃ刺さるんですよ!」と鼻息荒く営業が語るエピソード・資料には軽やかに眉唾で接し、お客様と接することができる営業同行や顧客インタビューを実施してみましょう。
善意の第三者として観察いたしますと、お客様がなぜそのサービスを好きになったのか、どこが気に入っているのか、なぜ購入しようと思ったのかが見えてまいります。
営業現場を眺めつつ顧客リサーチを進めてまいりますと、たいていビックリするような発見がございます。売り手の心理:セリングポイントと買い手の心理:バイイングポイントが驚異的にズレているからです。「顧客調査」や「営業動向」は販促ネタを探す目的で実行する施策ですが、営業資料もブラッシュアップすることができますので、実行されたことがなければ大変オススメの手法です。ぜひ実行してみてください。
カスタマーサポート部門から、お客様の声を拾い上げるのも良い手法です。アンケートや対応ログには耳の痛い言葉のオンパレードかもしれませんが、そういったお客様を選んで「顧客調査」いたしますときわめて有用なネタが拾えます。
また、声なきお客様にフォーカスするのも1つの手です。その時には、アンケートなどの手法ではなく、ぜひ対面(今時分はWebミーティング)で接してみてください。若干メールネタ捜索から外れてしまいますが、観察していますと隠れた不満や静かに評価いただいている点が見えてまいります。
貴社がメーカー系であった場合、開発現場や経営層から情報収集する時には注意が必要です。
拾い上げるべきは「どんな思いで開発したのですか?」「なぜその製品開発の判断を下したのですか?」であり、かなり迫力のあるネタを取得することができます。
思い込みがなければ世の中を変える製品・サービスはできないとよく言われますが、まさにその通りで、製品開発の熱い思いを語ってもらうことは顧客の心を打つコンテンツとなりえます。しかし、思いが強い分、その情報は今の見込顧客が欲している情報と必ずしも合致しません。「製品の良い点は?」の問いでは往々にして大きくズレた(これも私の私見です、気を悪くされたらごめんなさい!)情報になりがちです…
営業現場やカスタマーサポート部門の対応ログ、既存顧客から取得したアンケート情報は、MAツールを導入致しますとさらに効果的に活用できます。見込顧客データベースと連動管理することで、既存顧客との類似顧客を特定することができるからです。まだログを管理していないようなら、ぜひ管理されることをお勧めいたします。
また、作成したコンテンツをMAツールでメール配信する際に、顧客のレスポンスを測定・観察することも忘れないでください。何が求められているのか、数値のフィードバックを取ることができますので、思い込みがなくなってまいります。
メールフォロー時のKPI
4の「投げっぱなし、ノーフォロー。または過剰フォロー」は「フォロー施策KPI」の問題です。
メール施策あるあるですが、フォローをしなさすぎる、または過剰にフォローしてしまいがちです。
ゴールに応じて適切なプロセス・KPIを設定し、フォローの手段を設定するのが重要です。
この問題を書き始めると かなりの紙幅を割きそうなので、次回以降に詳細を記載させていただきます。
実行計画を作成する
5の「思いつきで実行してしまう」は、「実行計画」を立てることが重要です。
営業施策やマーケ施策とメールオファーを連動させるのであれば、おのずと実行タイミングが決まってまいります。突発的なニュースは存在しますが、それはあくまで突発的な事象であり、なんでもかんでも突発的ということはないでしょう。
1ヶ月・2ヶ月と無理に期間を決めて実行するのではなく、目的から逆算して計画に基づいて実行するということが肝要です。
具体的に、4月はじまりの企業様の活動を踏まえて、用意するネタや実行計画を考えてみましょう。
・4月 – 5月 : キーマン発掘&情報提供 → イベント系のネタ、または総合カタログ送付
・6月 – 9月 : 刈取り1 → キャンペーン系のネタ、または選別系のネタ
・10月 – 12月 : 情報提供2 → イベント系のネタ、個別カタログのネタ、営業商談ネタ
・1月 – 3月 : 商談・刈取り → 事例紹介ネタ、キャンペーンネタ、予算取得テンプレ系
企業活動は円環しておりますので、おおむね実行すること・タイミングは変わりません。
上記はあくまでサンプルですが、貴社のターゲット企業のカレンダーに即した情報提供を計画的に実行されると良いのではないでしょうか。
以上です。
次回は、MAツールを使ったメール配信における「事前準備」について深く掘り下げてご案内したいと思います。
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